魔法の粉

我が家は、スーパーで買い物をするときは、添加物の表示をすべてチェックします。
その結果、大抵は惣菜関係を買うことができません。
もちろん、コンビニで買うことのできる食べ物はほとんどありません。

便利さ、見た目のきれいさ、安さを引き換えに、魔法の粉の入っているものを、自分もこどもたちも食べない、食べさせない。この小さな抵抗が広がって、食文化やひいては社会のあり方も、よい方向へと変わっていくことを祈り期待するものです。

元トップ営業マンがあかす
食品添加物の現場 新連載1
安部司
端肉と30種類の「魔法の粉」で作るミートボール
人気食品の舞台裏

 「食品添加物は魔法の粉です」 `
 いきなりそんなことを言われても、読者の方はピンとこないかもしれません。
 「添加物って、食品に入っているやつでしょ」
 「保存料とか着色料のことですよね」
 毎日、□にしているにもかかわらず、多くの人が添加物に抱いているイメージは、多かれ少なかれその程度ではないでしようか。
 私はかつて添加物の専門商社に勤め、添加物を加工食品メーカーに売りさぱくセールスマンでした。当時から1500種類以上の添加物のリストが頭の中にあり、どんな食品トラブルも解決できたため、「食品添加物の神様」「歩く添加物辞典」とまで言われたほどでした。もちろん、トップセールスマン。
 この連載では、そんな私の経験をもとに、食品添加物の「裏側」の話をしていきます。皆さんがいま口にしている食品がどういうふうに作られているのか、その「舞台裏」をぜひ知っていただきたいと思います。
 まずは、「魔法の粉」とまで言われる添加物−−−。その威力を少しお見せしましょう。たとえぱ、みなさんが「おいしい、おいしい」と言って食べる冷凍食品のミートポール。これは「端肉」と呼ばれる肉(最近ではペットフードによく使われます)と大量の「白い粉」(添加物はだいたい白い粉です)で作られています。
 その製造過程はこうです。もととなる「端肉」は、形はドロドロで、味もなく、とても食べられたシロモノではありません。これにまず、廃鶏のミンチ肉を加えて増量し、ソフト感を出すために「組織状大豆タンパク」というものを加えます。これでなんとかべースはできますが、このままでは昧がありません。そこで「ビーフエキス」「化学調味料」などを大量に使用して昧をつけます。歯ざわりを滑らかにするために、「ラード」や「加工でんぷん」も投入。
 さらに、「粘着剤」「乳化剤」も入れます(機械で大量生産しますから、作業性をよくするためです)。これに色をよくするための「着色料」、保存性を上げるための「保存料」「pH調整剤」、色あせを防ぐための「酸化防止剤」を入れればミートポールのでき上がり。これが、みなさんが食べているミートボールなのです。もちろん、良心的な無添加のものもありますが、多くは使い道のない肉を30種類の「白い粉」で再生させたものだったのです。
(つづく)

あべつかさ
 1951年福岡県生まれ。山口大学理学部卒業後、添加物および食料商社勤務を経て食品研究所を設立。消費者、流通業者、メーカーを対象にセミナーを開催。現在自然海塩「最進の塩」研究技術部長。著書に「食品の裏側」(東洋経済新報社

「偽りの天秤を主はいとい/十全なおもり石を喜ばれる。」箴言11章1節