白い巨塔と建国記念日

白い巨塔

 私、あまりテレビドラマは見ないのですけれども、リメイクされた「白い巨塔」は、なかなか面白いです。大学病院の外科教授のミスによって引き起こされた医療裁判をめぐって、共同体の利益ゆえにミスを隠そうとする大学側の面々。しかしその中から一人の医師が真実を告げるために証人台に立とうとします。その医師に対して、様々なプレッシャーが襲うのです。

①共同体(大学関係者)維持のプレッシャー(「お前の正義感のために飯が食えなくなる人間のことを考えろ」←同僚)
自己実現に対するプレッシャー(「あなた、研究が出来なくなるよ」←上司)
③家庭破壊のプレッシャー(「家族のことを第一に考えてくれないなら出て行きます」←妻)
④短期的な善に対するプレッシャー(「お前がやめたらお前の患者はどうなるんだ!」←同僚)

 普通、これだけのプレッシャーがやってきたら、ただ単なる自己満足な「自分の正義感」では太刀打ちできないでしょう。
 この医師はドラマの中で「医療の進歩のため」に証言台に立つといいましたけれども、なるほどと思います。確かに、この動機こそが共同体の利益を越えさせ、自分や家族の利益を越えさせ、短期的な善を越えさせ、それらすべてを犠牲にしても証言台に立つ動機となりうる。なぜなら、純粋な意味で医療の進歩に献身することは「自分を愛するように隣り人を愛する」ことに献身することだからです。もし、「家族のため」「大学のため」といって真実を明るみに出さなければ、短期的にはいいように見えても、長期的に見れば同じような医療事故で死ぬ人がまた出ることになり、結局「大学」も「家族」も「社会そのもの」が不幸になっていく。結局、彼のように振舞う事が、本当の意味で「隣り人」を愛することになるわけです。それゆえに、全てを捨ててもそこに献身する価値がある。
 なかなかいいドラマじゃないですかぁ。「白い巨塔

 今日は「建国記念日」と国によって定められた休日ですけれども、そのような「自分の国」という身内感覚を超えた、グローバルな「隣り人」意識を、ぜひ身につけたいものです。