日陰者であることに耐えて

杉山隆男「兵士に聞け」新潮文庫、p57-58
防衛大学卒業式のこんなエピソードが・・・

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…だが、壇上の夏目晴雄学校長の口をついて出た言葉は僕の予想とは似ても似つかないものだった。

(校長は)「その上で、防大の生みの親である吉田茂元首相が諸君の先輩にこう言われたことがあります」と前置きして、防大OBの間で長年にわたり語り継がれてきたその言葉を紹介した。

…『「君たちは自衛隊在職中決して国民から感謝されたり歓迎されることなく自衛隊を終わるかもしれない。きっと非難とか誹謗ばかりの一生かもしれない。ご苦労なことだと思う。

しかし、自衛隊が国民から感謝され、ちやほやされる事態とは外国から攻撃されて国家存亡のときとか、国民が困窮し国家が混乱に直面しているときだけなのだ。言葉をかえれば、君たちが日陰者であるときの方が、国民や日本は幸せなのだ。耐えてもらいたい。」

……諸君の先輩は、この言葉に心を打たれ、自らを励まし、逆風をはねのけながら、ひそやかな誇りを持ち、報われることの少ない自衛官としての道を歩んだのであります。』

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 今、イラク派遣に関して、世論の自衛隊に対する期待や同情など、ある意味自衛隊の働きが報われ感謝される時代になってしまったことに、複雑な思いがいたします。