目にみえないけど大切なもの

 カトリックのシスターの渡辺和子さんが、「目にはみえないけれど大切なもの」という本の中に、こんなエッセーを書いておられます。


「東北地方を旅をしていたときのことでした。その日はあいにく雨がひどく降っていて、周囲の景色は何も見えません。
バスのガイドさんは、さも残念そうに、「晴れていれば、このあたりには美しい湖がごらんいただけるのですが、今日はおあいにくさまです」と謝るのでした。


 観光客の誰しもが残念がりながらも、そうかといって「いいや、見えていない湖があるはずがない」と抗議した人は一人もいませんでした。
 信じるということは、案外こういうことなのかもしれません。到底ありそうにない湖の存在を、ガイドさんの言葉ゆえに「ある」と信じて疑わない、ということです。


 同じことが、神の存在についてもいえるのではないでしょうか。「世の中」というバスに、今日も乗り込んでいる私たちに、イエスさまがバスガイドになって、「今日は目に見えませんが、神様は確かにいらっしゃいます。その方は私たち一人ひとりを限りなく愛していてくださる優しい父なのです」と、説明してくださっているのです。


 時には、「あなたが今経験していることは、父なる神のみ業とは到底思えない、理不尽で苦しいことかもしれませんが、信じてください。私が保証します」と、バスガイドさんはすまなそうにおっしゃることもあります。しかし、私たちは、イエスさまという、バスガイドさんの、その誠実さを知るがゆえに、その言葉を信じて、生きる勇気を頂くのです。」



素敵なエッセイですね。