2024-07-27 佐渡金山が世界遺産になったことの意義 わたしの母は佐渡島に住んでいて、母に会いに佐渡に渡るたびに、「佐渡金山」を世界文化遺産に登録する運動を見聞きしてきたので、今日の登録決定には、少しだけ思いがあります。 佐渡金山が世界文化遺産に登録された主な理由は、江戸時代、鎖国下で発展した伝統的手工業による高純度の金生産技術。江戸幕府の直接管理下で、高度に専門化された生産体制。17世紀には世界最大級の金の産出量を誇り、江戸幕府の財政やオランダを通じて世界貿易にも貢献。 そして遺跡の保存状態が良いことなどがあるようです。 ただ登録の合意に際しては、韓国が、戦時中の朝鮮半島出身者の強制労働があったとして反対していたところ、日本側が展示施設においてその歴史を説明することを約束し、日韓の合意に至るというプロセスを経ています。 そういう意味で、この佐渡金山の世界遺産登録は、強制労働の過去の歴史を記録する出来事でもあるでしょう。 実は、世界遺産には、過去の強制労働や奴隷制の歴史を含む例がいくつか存在します。 ・ゴレ島(セネガル):西アフリカの奴隷貿易の中心地であったゴレ島は、1978年に世界遺産に登録されました。この島は、奴隷貿易の歴史を伝える重要な証言として認識されています。 ・アウシュビッツ・ビルケナウ(ポーランド):ナチス・ドイツによる強制収容所跡地で、1979年に世界遺産に登録されました。ここでは多くの人々が強制労働に従事させられ、また大量虐殺の犠牲となりました。 ・ロベン島(南アフリカ):アパルトヘイト時代に政治犯収容所として使用され、1999年に世界遺産に登録されました。ネルソン・マンデラなどの囚人たちが強制労働に従事させられた歴史があります。 ・ホイアン古都(ベトナム):1999年に世界遺産に登録されたこの都市には、かつての日本人町が含まれています。ここでは、日本人が現地の人々を奴隷として扱っていた歴史も含めて保存・展示されています。 ・リバプール海商都市(イギリス):2004年に世界遺産に登録され、その後2021年に登録抹消されましたが、奴隷貿易の歴史を含む港湾都市としての価値が評価されていました。 これらの事例は、世界遺産が必ずしも「誇るべき」歴史だけでなく、人類の負の歴史も含めて保存し、後世に伝えるべき重要な遺産として認識されていることを示しています。佐渡金山の場合も、強制労働の歴史を含めた「全体の歴史」を反映することによって、より包括的な世界遺産としての価値を持つことになるのでしょう。