自分の傷から踏み出る

「わたしたち人間には、多くの苦しみがあります。すべてとはいえないにしても、その深い苦しみの多くは、愛する人々との関係に由来します。いつも気がつかされることですが、わたしの深い苦悩と苦痛は、新聞で読んだ惨事とかテレビで見た恐ろしい出来事によって引き起こされるのでなく、毎日の生活を共にしている人々との関係から来ると言うことです。私を愛知る男性と女性、私にとってとても親しい人々が、同時に私を傷つける人でもあるのです。・・・・私たちは時々、自分がどのように、またどうして傷ついたか振り返って整理しなければと感じます。・・・・しかし、私たちの傷を理解するだけでは不十分です。最終的には、自分の受けた傷から踏み出る自由と、自分を傷つけた人を赦す勇気を見出さねばなりません。実際、怒りや恨みにとらわれて身動きできなくなる危険があります。そうなると、私たちは「傷ついた人」として生きるようになり、「この世は不公平だ」といつも愚痴をこぼしながら過ごすことになります。イエスは、このような自己破壊的な不平不満から私たちを救うために来られました。イエスは言われます。「あなたの不平不満をすてなさい。あなたを満足に愛せなかった人を赦しなさい。拒絶されたという気持ちから一歩踏み出しなさい。自分には何の価値もないという底なしの空しさにおそわれることはもうなく、神はその愛であなたのすべての傷を癒し、あなたを安らかに抱いてくださることを信頼する勇気を持ちなさい」
ヘンリ・ナーウェン「いまここに生きる」P.59〜61