あるクリスマスの出来事


チラシ「のぞみ」18号に載せたクリスマスメッセージ


凍てつく寒さに加え、吹雪の晩だった。どこの家庭でも楽しいクリスマス・イブを過ごしている時期なのに、カナダのある町はずれの刑務所の高い塀の外のさびしい道を、いたいけな少女がひとり、行ったり来たりしていた。
 丁度、刑務所長が通りかかり、「どうかしたの?」と声をかけてみた。
「私、ここにいるお父さんにクリスマス・プレゼントを届けに来たのです」12、3才の少女はおびえたように答えた。
「じゃあ、わたしが届けてあげよう。お父さんに会わすわけにはいかないけど、ちゃんとあなたが届けに来たことを話して渡してあげるから。さあ、早く家にお帰り。」

 その少女の父親は、その刑務所でも有名な嫌われ者、看守泣かせの強盗犯人だった。
「さあ、君の娘さんがこの吹雪の中を届けに来たクリスマス・プレゼントだよ。あけてごらん」
 所長自らがそういって小さなリボンのかかった箱を渡してやっても、その男は一言も口をきかず、頑強に包みを開こうともしない。そのこわばった頑迷な表情よりも、彼の心はもっともっと堅かった。
「君の娘さんの心のこもったプレゼントだよ。さあ」
やっとノロノロとその男はリボンをほどきにかかった。
小さな紙の箱を開けると、眼もさめるような金髪の巻き毛が、惜しげもなくバッサリと切り取られ納められていた。
そして娘からのカードが添えてあった。
「愛するお父さん。クリスマスおめでとうございます。私はお父さんに何かよいプレゼントをと考えたのですが、お金がありません。お父さんも自慢していた私の金髪の巻き毛、わたしも大事にしているのですが、クリスマスのプレゼントとして贈ります。
 私の愛するお父さん。早く帰ってきてください。お母さんもいなくなったので、私は今伯父さんと叔母さんの所にいます。二人ともお父さんのことをよく言いません。でもお父さん、私にとって世界でたった一人のお父さん。私はお父さんが大好きよ。どんなにつらくても、寂しくても、私はお父さんを待っています。お父さん、お体を大切にね。毎晩、神さまにお父さんのことを祈っています。」


 この手紙を読んでいるうちに、この頑固な犯罪者の顔に赤みがさしてきた。顔を伏せると、その眼から涙があふれ、その口から嗚咽が洩れはじめた。


その男がその時から、生まれ変わったようになったのはいうまでもない。

リーダーズダイジェスト」より



 クリスマスとは、神の御子イエスキリストがお生まれになったことを祝うときです。神が人を愛して、私たちの罪を赦そうと、独り子イエスキリストというプレゼントをくださいました。イエスは身代りに十字架の上に命を捨て、人の罪は赦されたのです。この神の犠牲の愛。ここにクリスマスの心があります。